ここは、サイト運営者木村雄作の、エッセイコーナーです。
毎月1日に差し替えます。暇な方は、読んでみて下さい。
【老い】
 先日の事である。
 ふとした事で、我が家の写真アルバムをめくっていた。娘の小さい頃の写真でいっぱいだ。一緒に風呂に入っている写真など、可愛い頃の思いでは、つい昨日の事のように覚えている。その娘も、今では結婚して数年を数えようとしている。
 その娘と私と三人で一緒に風呂に入った親戚の娘も、今では三人の子供の母親だ。
 思いでは鮮明でつい昨日の事のように感じているし、精神的には自分ではちっとも年令を感じてはいない。
 少年の頃に面白かった遊び等は、今でも相変わら興味があるし、面白い。
 女性に対する憧れやまぶしさも、少年の頃のままで同じである。
 しかし、確実に、容赦なく、時は過ぎて行っているのである。
 人は時として、確実に進んでいる“老い”に愕然として思いをなし、空しさと寂寥を感じるのである。
 かって、私の青春時代に血湧き肉躍らせてくれたハリウッドの大スター達も、既にその殆どが居ない。
 ジョン・ウインも居ない。スティーブマックインも、ヘンリー・フォンダも居ない。
 今、テレビの“名画”として映し出されるこのスター達は、若々しく逞しい。
 しかし、やがては歴史の彼方へ忘れ去られて行く、過去の人達だ。
 現在我が国は、経済的にも恵まれて、その上世界に誇る先進の医療技術とによって、平均寿命世界一である。
 しかし、100才を越えて、五体全てに健全な人は皆無であろう。
 歴史を見れば、武家政治の礎を造った「平清盛」、国家平定の端緒を造った「織田信長」、一代の栄華を欲しいままにした「豊臣秀吉」、太平の世を造り、現代へと継いだ「徳川家康」、そして、明治維新から第二次世界大戦。
 全てが、あっという間に通り過ぎた、うたかたの夢に過ぎない。
 歴史の中で情熱を燃やし、怒り、叫び、泣き、そして喜んだ英雄達も、はかない命を燃やして、あっという間に終わってしまい、今や過去の人となってしまっている。
 一方、宇宙に思いを転ずれば、地球の年令は45億年、8000メートルに達する世界の高峰ヒマラヤの山々が海の底だったのは、僅か6000万年前の事だと言う。
 今人類に限りない恩恵をもたらしている太陽も、確実に燃え尽きる事がすでに分かっている。この我々の地球が、死の星となることもだ。
 この壮大な宇宙の歴史の中で、我々人間は、地球と言う星でどんなに頑張って生きてみても、100年が最高であろう。
 たった、100年である。何と言う短さであろう。
 宇宙の歴史からすれば、瞬きをするにも値しない時間である。
 松下電器産業の松下幸之助氏が、莫大な資産を残して、亡くなった。
 白塗りの女王と言われた鈴木その子氏は、念願の豪邸の完成を待つ事も出来ずに、無念の死を遂げた。
 錯覚にも等しいこの僅な時間の中で、我々人間同士は、殺し合い、奪い合い、傷付け合い、だまし合いをしているのである。おろかしい事である。
 人間が人間である限り、何人たりとも【老い】を避ける事は出来ないのである。
 だから、我々人間は、この何物にも代え難い命を大事にし、“時”を大事にして生きなければと思うのである。
 自分の命を大事にすると共に、他人の命も大事にして、暮らしに悔いを残さないような生き方をしなければと思うのである。
 この短い人生の中で、そのオアシスとして“恋”をさがし求めたとしても、誰が、それをなじる事が出来るのだろうか。
掲載済み】・思いちがい 夫婦の愛 誰のための人生か 遊びの心